天皇生前退位についていろいろ考えてみた

 

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この件、リーク情報と公式見解がまったく一致していなかったり、政権側はノーコメントの体を保っていたり、そもそも誰がどういう意向なのかわからなかったりするところが多いので、現時点で自分が思っていることをまとめておく。

 

まずこの話の発信源はNHKだが、単独で抜いたということではなくて、以前からそれなりの動きがあった話のように感じている。どこかのブコメであったが、各社の後追い報道でもそれなりに踏み込んだ話があったようなので、表立って報道はしてないけど、関係者は知ってはいる、みたいな状況だったんだろうと思っている。「なぜNHKなのか」や、「なぜ今なのか」については、この時点では深く考えないことにする。

 

今のところ国会側はノーコメントを通しているものの、政権というか自民党サイドには、報道内容は事前に話が通っていて認識済みだったものと思われる。いまのNHKが政権とつながっていないということは考えづらいからである。というより、政権の意向がある程度は反映されたうえでの報道になっていると考えるのが適切だと思っている。

 

本報道に対して宮内庁関係者が「陛下自身は早期退位の希望を持たれていない」と否定的なコメントを出しているが、これは考えてみれば当たり前の話で、天皇が国政に関与してはならないという原則が存在している以上、宮内庁としては「生前退位について検討したいと考えてるので、法整備やら検討会やらを立ち上げてほしいのです」ということは間違っても言えないのである。よって表向きとしては否定するしかない。NHKによると陛下がお気持ちを表明する方向で調整がされているらしいが、ものすごい婉曲表現がされたものになるんだろうなという気がする。

 

じゃあ政治の世界、というか自民党サイドからはどうなるのかというと、こっちもまた積極的に話をしていくことはないと思われる。退位に関する議論は天皇の政治利用そのものズバリな事案になってしまうので、党主導で議論を進めて余計な火種を抱え込むわけにもいかないと考えるのが普通だろう。「世論の高まりを受けて、皇室の在り方についての検討を行うことにしました」と首相か官房長官あたりがコメントできる土壌にすることが重要という話である。よって、こちらからも主体的な議論は提示されないだろうと思われる。

 

よって、本件については皇居と国会議事堂のどちらにとっても、正面切ってコメントしづらいセンシティブな事案となってしまう。公式には沈黙を保ちつつ、リーク合戦が繰り広げられていくことになるのだろう。目的は「国民的な議論」の醸成である。今後はNHKを中心に世論調査がされたり、「皇室の在り方について考える」的な番組が展開されたりして、「皇室典範見直したほうがいいよね」的な流れが作られていくんだろうなと思われる。ここまでいけば、政権が登場して皇室典範改正準備室をぶち上げるという流れになっていくんだろう。はっきり言って非常に面倒くさいプロセスになってしまうのだが、そういう風になってしまっている以上仕方がない。

 

最後に、宮内庁自民党(や、ほかのだれか)が、本件についてどういう意図を絡めているのかは今のところはわからない。一部では「安倍政権は改憲を優先させたいので皇室典範改正をつぶそうとしている」という説も出ていたが、個人的にはこれはたぶん逆で、賛同を得られやすい皇室典範改正を推進しつつ「変えるべきところは変えるべきなんです、法律も憲法も同じなんです」とか言ってハードルを下げにかかるように思っている。とはいえこればっかりは今後話が進んでみないとわからないので、誰がどういうオマケをつけにくるかは注目してみていきたいと思う。