ちゃぶ台返しとか言い出すのはアナタたちのアタマが固すぎるせいではないのか

ダビング10を人質にしてはいない」。権利者団体会見http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080529/cf.htm

全体的な流れとしては

  • 消費者の「コピーワンスはあまりに不便」という声に答え、権利者と協議した上でダビング10を採用
  • そしたら権利者が補償金の話を持ち出してきて、それでモメにモメてダビング10見送り

簡単に言うとこういう流れだと(個人的には)認識しているのだけれど。
今回の顛末に関してはよく分からないとトコも多いのだけれど、とりあえず明らかになったのは権利者様の技術についての理解があまりに低いということ。こんなんじゃメーカーのヒトも大変だったろうな。挙げ句メーカーは悪者扱いですかそうですか。

とりあえず今回の補償金の件についてメーカーが明らかにした点は次の2つ。

(1)(補償金の対象となる)HDD内蔵の一体型機器は汎用機と区別がつきにくく、いずれ汎用機の指定につながる
(2)制度が縮小していく保証が無い

これに対しての権利者側の見解が次の通り。まず(1)に対してだが、

「2年の議論を経てパソコンを制度の対象に加えないことに権利者は同意した。最大限の譲歩。一体型の機器と汎用機が区別がつくにくい、というが、HDDレコーダ/プレーヤーのどこがパソコンと見分けがつきにくいのか?
メーカーはいったいいかなる販売戦略で売っている、理解に苦しむ」と反論。加えて、「録音録画メディアはMDやDVDからHDDに移行しつつある。対象の拡大ではなく、シフトしているだけ。一体型の機器を加えなければ補償金の実体は生まれない。これは(文化庁の)中間整理案でも書かれている」と訴えた。

→お前の発言のほうが理解に苦しむ。
つーかパソコンも対象にしてますって完全に明言してんじゃねーかよ。

こういうまさにとんちんかんな話がでてくるあたり、彼らが言うパソコンっていうのはちょっと大きな箱とキーボードとディスプレイのセットで、スイッチを入れるとwindowsって表示されるような、そんなヨドバシの店先に並んでるものそのものみたいなイメージしかないんじゃないかという気がしてくる。
HDDレコーダなんてものは立派なコンピュータで、最近のレグザなんかは外付けHDDをそのまんまストレージに使えたりする。当然HDDにも課金するつもりなんですよね。もちろん記憶媒体としてはHDDレコーダもPCも何ら変わりはないわけで。というか、「どう見分けがつかないのか」ということすら今更認識してないあたり、いままでの2年の議論は一体なんだのだろうか。こんな初歩的なことをメーカーのヒトが言わなかったとは考えられないので、椎名氏のほうがよほど議論に参加してなかったか、聞く耳をもたなかったかのどちらかしか考えられないのだけれど。

(2)に関する見解はもっとひどい。

「拡大してく"ネットの世界"を補償金の対象から外す。まさに制度が縮小していくことの最大の根拠」と反論した。

ネットから取るって、ダレから取るつもりですか一体。
サーバ管理者?プロバイダ?モデム販売業者?NICとかLANケーブルの業者?それとも全部?
そもそも最近の再生端末で記憶媒体を搭載してない機器なんてものがほとんどありえないので、その状況下において「ネットの世界」なんぞを補償金対象なんかにしてしまえば、こいつは明らかに補償金の2重取りですから。なにを強欲ぶっているのかと。
仮にそいつを持ち出して「制度が縮小していくことの根拠」とか言われても、「現状では手の打ち様がないので保留してます」という風にも取れる。補償金を無くす方向性を明確に打ち出すのであれば、「補償金制度は○○年までにします」と明言すればいい。それをやらずに口先だけで「これから制度縮小します」って言われたって当然ながら誰も信用しない。現にメディアに限られていた補償金を拡大しようとしているのだから。

突っ込みどころはどんどん続く。

「こうした無償コンテンツの流通は、ネットワークだけでなく、家庭内や友人の間でも行なわれている。無償コンテンツの発生、流通を機器や媒体が支えていることに疑いは無い。補償金は、そのような機器や媒体のメーカーが、複製に供される機器や媒体を販売することで得る莫大な利益の一部を権利者に還元させようとするもの。補償金制度の正当性は、今日強まりこそすれ、薄れてきたなどという見方はあたらない」

CDの貸し借りとか、相当昔から常態化していたけど?今更そいつを槍玉にあげるっていうのはどうなの?

「現在の補償金制度は消費者が負担するという建前のもとメーカーが負担している。メーカーもそう自覚している」とし、「補償金イコール消費者の不利益として言われてきたが、消費者が負担する構造が生まれてメーカーが負担のサイクルから未来永劫開放されるだけのこと。この関係に消費者は気づいていないのではないか。この状況が消費者の本当に望んでいることなのでしょうか?」

いや、そもそもメーカー関係ないから。
もちろん消費者だって権利者に正当な対価を払うべきだと思っている(と俺は信じている)し、それが簡単にできる仕組みがあれば誰もが幸せになれるのではないかと思う。
しかしながらそれを可能にするためのDRMに関してはまだまだ技術的な課題が沢山あって、現状ではデジタルコピーが出回るリスクは避けられない。補償金ってのはDRMが十分かつ確実なカタチで普及するまでの「つなぎ」としては、ある程度妥当性のあるものだと俺は思っている。
もちろん「補償金とられなきゃいけないようなデータなんぞ入ってねーよ」というipodの持ち主もいるだろうし、一括りに徴収されることに抵抗感のある消費者も多数いることは間違いないが、それでも「最終的なデータの格納先に課金」というわかりやすさ故に、議論の落としどころとしては妥当なんじゃないかなと考えている。
もちろんそうやってドンブリ勘定された補償金をどうやって誰に配分すんの?という話はもちろん残るのだが、その話をすると現状のJUSRACと包括契約はどうなってんの?という話もしないといけないので、これに関しては触れないことにする。
話がずれたが、そもそもメーカーが作っているのはデータの入れ物に過ぎないわけで、消費者が「保存するかもしれない」著作権データのためにメーカーが余計な負担を背負い込むことはない。そういったメーカーの負担を減らし、消費者→著作者へのスムーズな対価の支払いをすることが一番理想的な姿なのだ。権利者が反語表現まで使って強調する「メーカーが負担のサイクルから未来永劫開放されるだけのこと」が「本当に消費者が望んでいること」ではないのか?

挙げ句の果てにこの発言。

「そもそもコピーワンスの問題の発端は“メーカーの落ち度”」と説明。「ムーブの失敗やクレームは、メーカーの技術力の未熟さとサポート体制の不備によるもので権利者と何の関わりも無い」

じゃぁお前らが技術者集めて素晴らしいDRMのシステム作れよ。
それが出来ないならテレビに出ないで、素晴らしい芸能を劇場で披露し続ければいい。録音・録画機器の持ち込みチェックでもやればデジタルコピーの流出は十分抑制できる。もちろんDVD・CDの販売などもしなければいい。暴論かもしれないが、デジタル情報から逃れたければ一切がアナログで構成された世界に身を置くしかない。それができないなら、自身が適応する努力をするより他にない。

これを(権利者側の)ちゃぶ台返しと言わずして何と表現したらよいのか。